インターネット医科大学での医療相談を通じて21世紀の医療を考える
No.3 セカンド・オピニオンと医療情報の公開
インターネット医科大学 学長
岡山大学大学院医歯学総合研究科 生体情報医学 助教授
越智 浩二
セカンド・オピニオンとは、自分の受けている医療を他の医療機関などに評価されるシステムです。つまり、従来の医療が医療サイドと患者との閉鎖関係であるのに対し、第3者による客観的な評価を受ける開放的システムということです。このシステムが目指すものは、医療の質の向上で、第3者の客観的評価にも耐えうる良質の医療の提供を目指しています。
セカンドオピニオンは既にアメリカでは確立されたシステムで、その費用も保険でカバーされます。日本ではまだ定着したシステムではありませんが、次第にその広がりを見せています。“当院ではセカンドオピニオンを推進しています。自分の受けている医療を第3者による評価をご希望されている患者さんはお申し出ください。”と、積極的にセカンドオピニオンを推進していることを明示している病院もあります。また、個人負担でセカンドオピニオンを受ける団体も既に存在しています。セカンドオピニオンを推進している医療機関は、行っている医療が第3者の評価にも耐えうる医療水準であるということです。患者としても、自分の受けている医療を第3者で評価してもらうことはよいシステムだと思います。
しかし、このシステムはわが国では定着するのに時間がかかるでしょう。その理由はいくつかあります。一つにはセカンドオピニオンが診療報酬として算定されていないことがあるでしょう。さらに、セカンドオピニオンに対して消極的な医療機関が多いこともあるでしょう。しかし、セカンドオピニオンが普及していけば、医療機関の質を評価する一つの基準として、セカンドオピニオンの推進が採用されば、医療機関も取り入れていかねばならず、消極的な医療機関も減ってくると思います。もっとも大きな問題として、日本の現在のシステムは医療情報がカルテという形で医療機関が保存している点にあると思います。医療情報は本来誰のためにあるかということを考えると、患者のためにあると思います。ICカードという形で医療情報が個人で所有することが出来るようになれば、もう少し簡単にセカンドオピニオンを受けることが出来るようになるでしょう。医療情報は本来患者のためにあるという観点から、医療情報の公開は少しずつ進んでいます。セカンドオピニオンの普及にはやはりこの医療情報の公開が重要な位置を占めると思います。
1998年の週刊朝日にインターネット医科大学がとりあげられ、“インターネットでの医療相談は種々の問題点があるものの、将来はセカンドオピニオンを担えるような形で発展していきたい”という、私のコメントが掲載されました。それから3年近く経った今も、基本的には考え方は変わっておりません。第1回でお話したように、インターネットでの医療相談には診察、検査などがありません。それらの情報を医療機関から提供を受け、インターネット上でセカンド・オピニオンを得ることはインターネットでの医療相談の特徴を考えれば、理想的な姿かもしれません。
現実にインターネット医科大学での医療相談で具体的にセカンドオピニオンを求めてくる例もかなりあります。答えられる範囲で答えています。しかし、医療情報が不足していることが多く、十分なセカンドオピニオンの役割を果たしているとは現時点では思っておりません。
医療情報の公開、ICカードなどによる医療情報の患者の所有、セカンドオピニオンの診療報酬への算定などの環境が整い、インターネットでのセカンドオピニオンが社会的に認められれば、インターネットでのセカンドオピニオンが可能になります。そうなれば、インターネット上のバーチャルホスピタルからバーチャルという形容詞が取れるようになる可能性が高いと思います。患者が自分の受けている医療について、その専門家の意見を広く日本中、あるいは世界中から得ることが出来る環境として、インターネットは現時点ではもっとも可能性が高い環境であるからです。
実はこのセカンドオピニオンと密接な関係があるのが、Evidence based medicine(EBM)というものです。EBMの日本語訳は“科学的根拠に基づいた医療”ということですが、一般的に日本でもEBMと呼ばれています。これは従来の経験的な医療から脱皮して科学的な根拠に基づいて医療を行う、あるいは医療を評価するものです。セカンド・オピニオンを得るために、第3者の意見を聞いても、それぞれが経験的な観点からの医療の評価であれば、意見の一致を見ない場合があります。EBMとはそれぞれの医療の根拠を科学的な証拠に基づいて論じるということです。科学的信頼度を1〜5に分類し、大規模な臨床試験で得られた結論から、専門家の個人的意見まで科学的信頼度に基づいて、医療を評価し、治療法を選択するものです。少し、難しい話になりましたが、医療サイドにも従来型の医療から、科学的根拠に基づいた医療、第3者の客観的評価に耐えうる医療の質を供給していく時代への波が確実に押し寄せてきています。
No.4 21世紀の医療とインターネットへ
教授プロフィール

【現職】
岡山大学大学院医歯学総合研究科生体情報医学 助教授
S55 岡山大学医学部卒業
H10/1月 岡山大学医学部臨床検査医学講座 助教授
岡山大学医学部附属病院中央検査部 副部長(併任、現在まで)
H13/4月 大学院大学改組により現職へ
【学会】
日本消化器病学会評議員
日本消化器内視鏡学会評議員
日本温泉気候物理医学会評議員
日本内科学会中国地方会評議員
日本臨床検査医学会中国・四国地方会評議員 など