前略
メール拝見いたしました。症状からすると、やはりアルツハイマー病の可能性があると思います。アルツハイマー病は痴ほう症の代表です。但し、やはり一度は診察してもらい病名を確認してもらった方が良いのではないでしょうか。単なる「老人性の健忘」というだけかもしれません。以下、アルツハイマー病に関しての一般的な事項です。
この病気は、本人に自覚が無いため、介護面で苦慮します。本人の病気に対する自覚は乏しいので、本人の言動内容を「否定しない」ことが大切になります(本人にとっては「正しい」と思っているので、否定されると混乱するので:このことは市販の「痴呆」に関する本にもいろいろと記載されていますのでご参照下さい)。アルツハイマー病とすれば、治療方法に関しては、投薬とデイケアが主たる治療方法です。投薬治療効果に関しては下記(「投薬治療に関して」)をご参照下さい。多少進行を遅らせる効果が期待されますが、根本的に治す薬はありません。現状ではアルツハイマー病の進行を抑える確実な手段というのは未だ確立されていないのが現状です。診断が正しければ、やはり残念ながら徐々に進行します。
◆「投薬治療に関して」
アリセプトは、朝日新聞論壇記事
(
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AriceptAsahi991124.html )でも専門医が指摘しているように、目に見えて改善するような効果はほとんどありません。私も1999年末以来アリセプトを開始し、現在60名程度使用をしていますが、ご家族から「多少は変化があった」という話しを聞けた方は現状ではわずかで(ただし、稀に著効例があります。私のデータでは約3%です)、やはりご家族が期待する「効果」には程遠い感じがします。詳しくは以下のファイルを参照下さい。
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzSyukangendai1003.html
◆「デイケアに関して」
デイケアは、集団で行うリハビリテーションです。病院・施設などで実施されますが、この治療も根本的に痴呆症を治すものではなく、本人が楽しく一日を過ごせるように実施するものと考えてください。痴呆症のリハビリテーション(デイケア)はあくまでも「介護」の手助け(介護者が目を離せる時間を作るなど)という位置付けです。但し、リハビリテーションによって本人の「意欲・感情」などが好影響を受けて、表情が大変明るくなるなどの効果は出ることもあります。しかし残念ながら、痴呆の中心症状である「記憶障害」などの改善効果は、科学的には証明されておりません。ごく一部、デイケアでかなり良くなる方がいるのも事実ですが・・・。
医療機関に関しては、私のホームページ上の「私の選ぶ痴呆症の名医」というコーナーをご参照下さい。
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/tihouMEII.html
本人が嫌がる場合の受診に関しては、「物忘れの検査」という表現にして、「痴呆症の検査」と言わなければ良いのではないでしょうか(それ位しか具体的な手段は無いように思います)。それと担当医の先生に、「結果の説明は家族だけにして下さい」と前もってお願いしておくと良いのではないでしょうか。
追伸
欧米では、アルツハイマー病に対する「ワクチン療法」の第一相臨床試験(簡単に言うと実験段階)が始まっております(日本では未だ不可能)。数年先には実用段階となるかもしれません。今までの治療とは違い、根治的な治療になる可能性があります。アルツハイマー病の遺伝子治療も米国で始まりました(下記アドレス)。
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/AlzIdensi0104.shtml