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虫歯や歯槽膿漏でないのに、歯が痛む原因は何ですか?

相談: (22歳 男性)
歯が舌にあたって、いつもひりひり痛みます。夜中は特に痛くてあまり眠れません。歯医者へ行って抜いてしまいたいのですが、先日行ったところでは「歯はなんともない」と言われました。虫歯や歯槽膿漏でなくても歯が痛むのはどんな原因なのですか?
回答:歯科・口腔インプラント科 教授 沼田 尚文
口腔内で舌が歯に軽く触れているのは正常なのですが、まれに習慣的に舌を歯に強く押しつける習癖の持ち主がいます。いったん気にし出すと止まらなくなり、舌に潰瘍ができたりします。意識してそれをやめるようにすればなおりますが、なかなかむずかしく強い意志と我慢が必要です。

こんなことがわたしの過去の臨床上でありました。
高校生の男子が左上奥大臼歯が痛いので抜歯してほしいと言って来院しました。X線検査、視診などでは特に異常はありませんでした。ただ、患者さんの痛みの性質の表現や説明に疑問を持ったので、まず投薬で経過をみることにしました。

患者さんは比較的素直に納得したようでしたが、二度目の来院時にも抜歯を強く希望するのです。実際、困惑したのですが何度目かに口腔内を診て舌に潰瘍があるのに気づきました。「本当は舌が歯に当たって痛いんでしょう?」と聞くと「はい」と素直に肯定します。しょっちゅう舌で歯に触っていて舌が傷ついていたのです。「歯を抜くのではなく舌の習癖をなおそうね」と説明すると、また「はい」と素直に従うんです。

歯のとがった部分を少し削合したりして帰ってもらったのですが、次のアポイントは無断キャンセルでした。なおったのかなと、そのことを忘れかけた約半年後、その高校生が再び来院したのです。

主訴は同じでしたが部位が違いました。右上大臼歯どころか左上大臼歯もすでになく、今度は両側の小臼歯を抜いてほしいと言うのです。どこかの歯科で両側の大臼歯を抜いたらしいのですが、担当した歯科医がどんな心境だったのか知る由もありません。

また説得と無断キャンセル、そして再々来院の時は上下とも前歯しかありませんでした。心療内科の受診を強くすすめ、その場で両親に電話で連絡を取ったのですが、電話に出た母親からその高校生の父親が舌癌で亡くなったことを聞かされました。もう高校は行かず二十歳になっていたその青年は歯が痛いから麻酔だけでもしてくれと言います。そうやって麻酔をしてもらって、その青年は自分で歯を抜いていたんです。

インフォームドコンセントの時代に、患者さんの全人格まで考慮した計画診療が求められていても、なかなか追い付けない理想と現実の狭間に、いつしか慣れすぎていて、患者さんの心のケアまで考えずに診療をしていることがあります。あなたの質問が今回の過去の苦い経験を思い出させてくれました。もしあなたにも思い当たるふしがあれば、心療内科の受診をお勧めします。早ければ早いほど、心のもつれた糸はほぐれやすいものです。
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