相談:
(27歳 女性)
平成14年8月に、DICにより急性腎不全になり、予後はよく、一ヶ月ほどで退院しました。多田、数ヶ月おきに、寝てるしかないほどのだるさにおそわれ、色々検査をしても、腎臓には異常ない(カリウムだけ異常に高かったのですが)と言われ、むくみもとれずにいました。昨年11月に順天堂の腎臓内科にかかった際、甲状腺ホルモンが多少少ないと言われ(FT3が2.1 TSH−前が0.54)、チラージンを飲み始めました。(チラージンS−50を1錠)
そのあとも、だるさ、むくみはあまり変わらず、定期的に血液検査だけはしていました。今年1月に又ものすごいだるさにおそわれて、血液検査をし、チラージンS−50が2錠に増えました。(F3が0.84 TSHが0.13 T−choが271)先月は、血液検査の結果、F3が0.59 TSHが0.3 T−choが324で、ローコール(20)を1錠飲むことになりました。そのせいか、5月の血液検査の結果は、F3が0.91 TSHが0.01 T−choが160でした。
疑問なのは、「甲状腺低下症」と考えてよいのか、と言うこと。本を読んでいると、血液検査だけでなく、いろんな検査をした上で診断されているようなのに、私のように血液検査の結果だけで「甲状腺低下症」と診断できるものなのでしょうか。もう一つ、橋本病と甲状腺低下症は異なるものなのですか?自分の不調の原因が特的なくてずっと悩んでいただけに、今も不安があります。ちなみに現在は、多少のムラはあるものの、比較的元気です。宜しくお願いします。
そもそも、なぜDICになったか等の経過の記載が全くありませんし、橋本病と診断されているのかどうかも不明ですので、病状の全体像を把握できません。実際に診ていませんので、明確なことは言えませんが、文面から判断する限り、甲状腺機能低下症ではないと考えられます。
確かにFT3は低値ですが、TSHは全く上昇しておらず、FT4値の記載もない(測定していないのでしょうか?)ため断言はできませんが、おそらく、腎不全による 「 Low T3 症候群 」と考えられます。高コレステロール血症も、おそらく、腎不全に基づくものでしょう。
末梢血液中の甲状腺ホルモンの大半はT4です。末梢血液中のT3の大半は、T4が肝臓及び腎臓で脱ヨード代謝を受けることによって生成されたものです。肝炎や腎不全などの際には、肝臓あるいは腎臓での脱ヨード代謝が低下してしまうため(=T4からT3への変換が低下してしまうため)、末梢血液中のT3値は低下してしまいます。これを、「 Low T3 症候群 」と呼びます。「 Low T3 症候群 」は、甲状腺機能低下症ではありませんので、TSHは正常値を示します。また、甲状腺機能低下症ではありませんので、甲状腺ホルモンの補充療法は、当然、行いません。
「 Low T3 症候群 」を甲状腺機能低下症と誤診し、甲状腺ホルモン剤が誤って投与された可能性が考えられ、現在、TSHが著しく抑制されており、この状態が持続すれば、骨粗鬆症等の問題を引き起こす危険性が心配されます。
FT4値の記載がありませんので、明確には言えませんが、FT4値は高値(=医原性の甲状腺中毒症(=甲状腺ホルモンが過剰な状態))になっている可能性が危惧されます。もしそうであるならば、心臓等にも負担がかかり、不整脈や心不全等を生じる可能性も心配されます。
早急に、甲状腺専門医の診察を受けることをお奨めします。なお、橋本病と甲状腺低下症とは、別々の概念です。甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの産生・分泌が低下し、甲状腺ホルモンの不足を生じている状態の事を指します。原因には種々のものがあり得ます。橋本病以外に、下垂体機能不全・視床下部機能不全・甲状腺の形成不全・甲状腺摘出術後や放射性ヨード治療後など、があげられます。
橋本病は、自己免疫反応による慢性の甲状腺炎です。慢性炎症のために、長い目で見ると、甲状腺機能低下症を生じる可能性がありますが、機能正常の場合も少なくありません。また、出産後になど、一過性に炎症が著しく増悪し、甲状腺の破壊によって甲状腺内に貯えられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出し、一時的に甲状腺中毒症に陥ることも珍しくありません。