相談:
(32歳 女性)
おたふく風邪のことについてお伺いします。私の彼が姪っ子からおたふく風邪を感染したかもしれないといわれました。姪っ子とチュッとしたことが原因だそうで、その3日後の13日頃からおたふく風邪の症状が出たらしいのです。
私も彼も幼少期におたふく風邪を発症してません。8/23日に彼と会う予定でいます。大人のおたふく風邪は怖いと聞いているので予防接種をした方がいいのではと考えています。
やはり予防接種は必要でしょうか?そして会う5日前くらいに予防接種しても意味はないのでしょうか?それから予防接種はどこで受ければいいのでしょうか?教えていただきご相談いたしました。よろしくお願いします。
おたふくかぜ(=流行性耳下腺炎=ムンプス)は、ムンプスウイルスによる感染症です。唾液などの飛沫および接触感染で拡がりますが、患者の尿にもムンプスウイルスは排泄されます。
感染性のある期間は、症状の現われる数日前から症状が消失するまでの期間です。症状(後述)は約2-4週間続きます。潜伏期間は、2-3週間です。したがって、彼が姪の方とキスして3日後の8月13日に発症したということですが、その時(8月10日?)のキスで感染したと言うことはあり得ません。逆算すれば、7月下旬から8月初旬までの間に感染したと考えられます。
おたふくかぜの症状は、耳下腺の炎症が特徴で、通常は両側の耳下腺が痛みを伴って腫れます。発熱を伴う場合が多く、顎下腺や舌下腺もしばしば腫れます。2週間ほどで自然に軽快することが多いのですが、4週間以上も唾液腺の腫れがひかない例も時にあります。おたふくかぜは、感染しても症状が現われない不顕性感染が、30%程度と、少なくありません。しかし、おたふくかぜは種々の合併症を生じることが多く、時には唾液腺炎の症状を全く認めずに合併症のみが現われることもあります。
最も頻度が高く重要な合併症は、髄膜炎・髄膜脳炎です。明らかな中枢神経症状を示す例は全おたふくかぜ患者の約10%ですが、脊髄液中の細胞数増多を示すのは全おたふくかぜ患者の半数以上であり、「おたふくかぜ患者の半数以上は髄膜炎・髄膜脳炎を生じる」とも言えます。おたふくかぜによる髄膜炎・髄膜脳炎は、後遺症なく治癒することが多いのですが、まれには、てんかん・麻痺・死亡を生じることがあります。
思春期以後の男性では、約20-40%に睾丸炎を生じます。まれには、不妊症の原因になります。そのほか、膵臓炎・卵巣炎・心筋炎・甲状腺炎・腎炎・肝炎・関節炎・溶血性貧血などの合併症がまれにあります。妊娠3ヶ月までの妊婦が感染しますと、胎児死亡の原因になります。
以上のように、おたふくかぜは、重い合併症を起こす感染症であり、ワクチン接種で予防することが大変重要です。
おたふくかぜワクチンは、有効率が非常に優れています。副反応は、ワクチン接種2-3週間後に軽度の耳下腺腫脹を数%に認め、非常にまれに(数千人に1人の割合で)髄膜炎を生じます。が、ワクチン接種による髄膜炎は、おたふくかぜに自然感染した場合と比べ、はるかに頻度が低く、かつ予後も良好ですので、個人防衛としては、是非接種を受けるべきです。
1歳以上の未罹患者が接種の対象です。任意接種で受けられ、年齢の上限はなく、成人でも受けられます。日本では、1981年から任意接種で、おたふくかぜかぜワクチンの一般接種が開始され、1989-93年の間はMMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)ワクチンとして、定期接種(法定接種)されていました。しかし、MMR接種により、数千人に1人の割合で髄膜炎が発症したため、現在はMMRは中止されています。なお、米国製のMMRワクチンは、このような副作用が少なく、米国ではMMRワクチンの定期接種が行なわれています。
現時点で、日本で接種可能なものは、おたふくかぜ単独のワクチンです。ワクチンは、弱毒生ワクチンですので、女性の場合は、接種4週間前から接種4週後までの期間は、避妊が必要です。接種後、効果が現われるには4週間程度かかります。
今すぐ接種しても、彼と会う予定の8月23日までには、十分な効果は期待できません。また、8月23日までに彼の症状が消失している可能性は低いと思われます。ですから、安全のためには、まずワクチン接種を受けた上で、9月中旬頃までは彼と接触しないことが大切です。
なお、感染の機会があった後に、ワクチン接種を受けても、感染は防止できません。おたふくかぜワクチンの接種は、小児科および内科などで受けられます(予約制のことが多いと思います)。成人の場合は通常は内科で受けることになりますが、予防接種をほとんど行なっていない場合もありますので、あらかじめ医療機関に直接問い合わせてください。内科で受けられるところがお近くになければ、小児科に問い合わせてください。