相談:
(男性)
平成12年12月-平成13年1月にかけて、全身倦怠感、皮膚そう痒症、関節痛が生じました。丁度ステロイド白内障の診断で手術を予定していたため(結局はできませんでしたが)、眼科にて術前健診を受けたところ、AST,ALTが300-400と上昇していました。そこで、腹部エコーを受けたところ脂肪肝の所見がありました。エコー及びCTでは特に腫瘍性病変は認められませんでした。鑑別診断として、自己免疫性肝炎、Weber-Christian病の合併症としての脂肪肝、ステロイドの副作用としての脂肪肝、何らかのウイルス性肝炎(HCV、EBV、CMVなどが検査されましたが、CMVのみ既感染パターンで他は未感染でした)、薬剤による肝障害(平成12年10月の心筋炎に対し、メインテート、ノルバスク、タナトリル、ラシックス、アルダクトンの内服が行われていましたが、DLSTでは全て陰性でした)などがあげられました。
まずは、地元の民間病院に入院の上、プレドニン大量療法(60mg/day)、ステロイドパルス療法、G-I療法などが行われましたが、効果は認められませんでした。基幹病院に転院の上、肝生検を受けました。その結果、肝細胞への脂肪沈着が著明で、炎症細胞の浸潤や肝の線維化は認められませんでした。さらに、ステロイドの副作用による骨粗鬆症(骨密度60%)に起因する第1腰椎の圧迫骨折を生じました。それに加えて、易感染性によると考えられる全身の皮膚カンジダ症と膿痂疹や左腸腰筋膿瘍も発症しました。膿瘍に対しては、体外からのドレナージと全身への抗生剤投与にて軽快しました。なお、起炎菌はMSSAでした。さらに、耐糖能異常(食前血糖200mg/dl以上、食後2時間値血糖400-500mg/dl)も示しており、インスリン1日3回皮下注も必要としました。
その後、プレドニンの減量が開始され現在、5mgと2.5mgの隔日投与中です。血清コルチゾールは3-5μg/dlです。減量に従って、耐糖能異常は消失し、皮膚の感染症も軽快しました。しかし、プレドニン15mg/dayまで減量した頃から、再び皮下硬結(両大腿内側部)、レイノー現症、手指・手首・肘・肩関節痛、を認めています。また、一時AST,ALTは40-60、70-80まで低下していましたが、最近はそれぞれ80-100、150-200です。Ig-Gは2000-2500mg/dlで、抗核抗体は40-80倍です。他の抗Sm抗体、抗Scl-70抗体、抗RNP抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗ds-DNA抗体などは陰性です。
そこで、質問ですが、
1.このままステロイドの減量を続けてもよいものでしょうか。肝障害がステロイドの副作用ならば、減量は当然かもしれませんが、WeberーChristian病によるものならば、むしろステロイドの免疫抑制作用も必要なのでは。それに、レイノー、皮下硬結、関節痛などの諸症状もステロイドの減量に伴って出現してきたような気がします。とはいうものの、ステロイドの副作用としての白内障、骨粗鬆症、易感染性、それにまだ出現してはいないけれど、消化性潰瘍などはもちろん気になります。
2.サイクロスポリンAによる治療の有効性はどのくらでしょうか。今後も再燃、軽快を繰り返すようならば、結果的にステロイドの長期投与になることが予想されます。サイクロスポリンAによる治療が有効な症例もあると聞きました。
3.WeberーChrisitian病の予後は、ケースバイケースとは思いますが、いかがでしょうか。すでに脂肪肝や心筋炎の既往があるので、生命予後が最も気になります。
4.Gaシンチや頭部MRI検査などが今後予定されていますが、他にやっておいた方がよいと思われる検査はありますでしょうか。
以上、経過が複雑で申し訳ありませんが、アドバイスをよろしくお願い申し上げます。
ご質問有り難うございます。なかなか複雑に入り組んでしまった病状ですね。膠原病ではよくあることですが、整理してみましょう。
病気本来の症状、付随して続発した膠原病の症状、薬剤による副作用(白内障、糖尿病、骨粗鬆症、膿瘍、脂肪肝)と全く関連性もなく発症した症状などに分類できるかと思います。
まず、Werber-Christian病は、膠原病などがなく、組織学的に、原因不明な結節性脂肪組織炎が確認された場合につけられる病名ですが、結構稀な病気です。多くは、全身性エリテマトーデスや膵臓疾患に付随して発病しますが、予後は余りよいとは言えません。われわれは、まず全身生エリテマトーデスが潜んでいるなと考えます。しかし、田中さんのこれまでの検査(特に、抗核抗体)から、全身生エリテマトーデスはなさそうに考えられますが、皮下硬結(おそらく結節性紅斑?)やレーノー現象、関節痛などは、他の膠原病への移行を疑わせます。経過を見ないことには分からない部分もあり、判断に迷うところです。
ご質問のお答えにはあまりなりませんが、現在の病状から、副作用の軽減を目的に薬剤の減量を計られるよりも、病状を抑えるための強力な免疫抑制が必要な印象を受けました。サイクロスポリンなどの効果もはっきりした信頼性の高い研究がありません。個々の患者さんについての症例を積み重ねているのが実状です。経過から、主治医の先生は一生懸命、よい方向で努力されている印象を受けました。大変つらい治療や闘病生活だと推察いたしますが、希望を持ち続けることが患者さんのやるべきことだと思います。