相談:
(43歳 男性)
はじめまして。よろしくお願いします。永い糖尿病の合併症で腎臓病を併発、この夏人工透析をはじめた70になる母についての質問です。
先日透析中に意識を失い緊急処置のようなことをされたそうです(これについて病院からは、5日たった今でも家族に連絡はありません。)。透析開始後、3週目くらいから体調がよくなく、透析前・中に看護士に血圧を上下させる薬をよく打たれるとこぼしていました。そういう処置を医師の立ち会い・相談無く現場で看護士が行うことは、日常的・適切なことなのでしょうか?そういう不信感を持っていた本人は、意識不明になったことにとても恐怖を感じ透析医院を替わりたがっています。私は、母を一人暮らしさせて遠方で暮らしており、どうしたものかと思案しています。
こんにちは。お母様が糖尿病で透析治療を始められたとの由、さぞかしびっくりする事の連続でしょう。
>先日透析中に意識を失い緊急処置のようなことをされた
>そうです。(これについて病院からは、5日たった今でも
>家族に連絡はありません。)
この内容は何なんでしょうか。
一時的にでも人工呼吸器を付けたとか、心臓カウンターショック(最近よくAEDと称する、似たようなものがいろいろな公共施設に設置してありますよね。)をしたとか、と言うのならともかく、私が推測するに、おそらく透析中によくある「透析に伴う血圧低下」が起こったのだろうと思います。
そして、ベッド上で横になった状態でいるにもかかわらず、いわゆる立ちくらみに近い状態となり、意識も薄れたため、血圧を上げる処置、具体的には、足を持ち上げて足の血液を上半身に戻す、生理食塩水の注射、昇圧剤の注射等がされたのでしょう。これは、日常茶飯事です。
「透析に伴う血圧低下」は、除水(尿の出ない、または、少ない段階までに到った腎不全の方に対し、機能しない腎臓の代わりに、透析で体にたまった水分を取る事を意味します。)を伴う透析にはつきものの現象で、特に透析導入後数ヶ月の方や高齢者には必発です。
透析歴の長い方でも、食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしてしまう(自己・体重管理の失敗)と、同じ事が起きます。体重管理の目標はドライウェイトと言う、目標体重の5パーセント以内の体重増加に抑える事です。50sの人なら、52.5sまでで次回透析に来院してきて欲しいものです。
それ以上でも、透析自体はできますが、それだけ大量に除水する事となり、本人もきついし、血圧は更に下がりやすくなります。小手術のはずが、大手術になったのと同じです。
その処置の手順も、お決まりのものがあり、「血圧が○○以下になったら、□□をする。5分様子を見て、効果なければ、△△を注射する。」と言う継続指示を、医師が看護師や臨床工学士に対し出しているはずです。普通の病気でクリニックにかかり、外来で点滴をする時も医者は横についていないですよね。看護師さんが点滴して、横の方で見ているだけですよね。それと全く同じです。もちろん、そのお決まりの処置でも血圧が上がらず、意識もはっきりしないようなら、医師が飛んでいく事になるはずですが・・。
ただ、私もいろいろな施設で透析をして参りましたが、救急車で運んでこられたような緊急透析の患者様を除き、外来維持透析の患者様に関しては、まず99.9%それで回復します。
もちろん、透析中も血圧が下がらないようにいろんな設定をする事が大事ですが、透析後半に血圧が多少とも下がらないような透析条件では、水が一番たまった時、つまり透析前夜に心不全を起こす可能性があると思って頂いた方がよく、それこそ生命の危険があります。
理想は、水が最大に貯まっても心不全を起こさず、最小に引ききっても血圧が下がらない事ですが、それには患者様ご自身も体重管理を厳格にして頂き、医療者側も本人や御家族とまめにコンタクトを取って、薬や透析条件を適切にする事が大事です。透析はみんなでする協同事業です。
透析は既製服と同じです。他の病気の治療のように、個々の患者様に合わせた、オーダーメイドの服のような治療とは全然違います。
24時間365日一瞬たりとも休まず働いていた腎臓の代わりを、2〜3日に一回3〜4時間という、短時間に固めて行う荒っぽい治療です。そして、それは内科的な手術と言ってもいいくらい、体にとっては大きな負担になります。
特に高齢の方では、透析開始後半年くらいはどうしても血圧が下がるし、精神的にも機械に依存する体になってしまったと落胆される方が多いです。透析に限らず、生活もきついし、時間も取られるし、精神的にも普通でいられるはずがありません。一人住まいは無理です。
>透析開始後、3週目くらいから体調がよくなく、透析前・中に
>看護士に血圧を上下させる薬をよく打たれるとこぼしていまし
>た。
血圧を上げる薬は打つでしょうが、下げる薬を打つというのは誤解でしょう。透析で下がってしまう、と言う方が正確だと思います。体調がよくないのは、少なからずしょうがない事です。 毎回大手術をしているのと同じ事ですから。
ただ、始めの半年を、何とか頑張って体重の自己管理をしていただければ、その後は、そんなに辛そうにされる方は少ないです。自己管理がちゃんとできなければ、その半年の内に、透析をしているにもかかわらず、生命も危なくなるでしょう。
>そういう不信感を持っていた本人は、意識不明になったことに
>とても恐怖を感じ透析医院を替わりたがっています。
不信感ですか・・・。自分のお体に自信が持てなくなったという事じゃないかと思うのですが・・。そういう意味で、他の透析施設に移られても、状況はほとんど同じだと思います。
もちろん、今、通われている医院がとりわけ非常識な所なのかも知れませんが・・・。少なくとも、文面から見る限り、他と変わった所があるようには思えません。もともと糖尿病で透析となった方は、腎不全の方は透析で何とかなるものの、糖尿病自体が逆戻りして良くなる訳でもなく、これから様々な合併症が露見して来ます。
代謝の関係で、血糖だけは落ち着いてきて、必要不可欠だったインシュリンも不要になったりします。ただ、ほぼ行き着いたと言える程、完成した動脈硬化は戻りません。視力低下、足などの感覚障害、心臓・脳血管障害、など、これから起こりそうな病気はたくさんあります。
御母様の一人住まいなど、もっての他だと思います。大変申し上げにくい事ですが、大雑把に言えば、もって後5年、体重管理など自己管理がうまく行かなければ数ヶ月、心臓、脳血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、脳出血など)等はいつ起きても不思議ではありません。精神的にも安心できる環境を作って差し上げる事こそが大事です。まず、して頂きたい事は、御母様の一人住まいの解消です。
そして、次は医療施設とのコミニュケーションの回復です。わからない事はざっくばらんに聞きましょう。遠いからこそわからないのです。一緒に住んで、近くの医院で透析をすればコミニュケーションも容易です。透析の一般書も読んで下さい。御母様と一緒に、信頼できる医院で頑張りましょう。
通われている医院の事やご家庭の事情も存じ上げず、御母様も拝見しないまま、勝手な事ばかり申し上げました。もし、失礼があれば、平にお詫び申し上げます。多少なりとも
ご参考になりましたら、幸いです。