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no.051128004612

溶連菌感染症を何度も繰り返し心配です。

相談: (36歳 女性)
はじめまして。よろしくお願いいたします。4歳の息子のことです。2005年5月に初めて溶連菌感染症と診断され、以降何回も繰り返しています。無症状の場合でも迅速診断キットで陽性となり、その都度抗生剤を指示通り服用しています。詳しい経過は次の通りですが、一般的にこのような患者はどのような治療が妥当なのでしょうか。今後このままこういった治療を繰り返しながら、体が強くなるのを待つというが妥当なのか、扁桃腺の摘出を考えるほどの状況なのか、そもそもそれほどリスクを考えなくてよいものなのかどうか、先生のご意見をお聞かせいただければと思います。

<経過>
5月下旬 症状有(発熱・喉の痛み・苺舌・皮剥け)バナン7日 
6月下旬 症状有(発熱) サワシリン10日
7月中旬 症状有(発熱)ユナシン10日
7月下旬 症状有(発熱)クラリシッド7日
8月上旬 症状無し ファロム7日
8月下旬 症状無し ワイドシリン7日
10月上旬症状無し ワイドシリン7日

8月以降は特に症状はなく(しいて言えば少し舌のブツブツが目立つ程度)、風邪以外はごく普通に元気に暮らしておりますが、念のためと受けた喉の検査(迅速診断)でいつも陽性となります。検尿の結果については、いずれも問題なしです。8月下旬には培養の検査も受け、結果はβ−streptococcus groupA 3+ で、薬剤感受性をみてお薬が処方され、飲み終わった翌日に受けた培養検査の結果では、A群溶連菌は認められませんでした。また、家族全員も培養検査を受け、溶連菌でないことの確認及び治療を行いました)舌のブツブツについて小児科では、その正体は血液でそれ自体は心配いらないとのことでした。このような状況下、何件かの小児科で相談をしたり、自分で調べるなどして次の点については理解できました。

・治療が中途半端だったり、無治療で経過すると急性腎炎やリウマチ熱などの重大な病気へ移行する可能性がある。
・無症状の場合でも、迅速検査で陽性ならば要治療である。
・年に3回以上溶連菌感染症の扁桃炎を繰り返す場合は、扁桃腺の摘出を考える必要がある。
・溶連菌のキャリアで、扁桃腺が病巣となっている場合も摘出の必要がある。

しかし一方で、
・溶連菌は空気中にも多く存在し、もともと10〜20%の子ども(保菌者)の喉にいるともいわれていること。
・喉についていても、培養検査で1+程度で、感染症を起こした状態でなければ、薬を飲まずに経過を見てもいいかもしれない。
・溶連菌のキャリアだった場合も、自然と消えることもあること。
*間違いがある場合はご指摘下さい。

現状をどの程度の深刻さで受け止めるべきなのか、腎炎・リウマチ熱などのリスクを回避するのにもっとも有効なことは何なのか、それが知りたいです。

以下質問です。
1.こんなにも溶連菌を繰り返すという患者は珍しいのでしょうか?5回目以降は念のため喉の検査を受けなければ、きっと見落としていたであろう程、体調的には問題ない状態でしたが、気付いていないだけで同じような子供はたくさんいるものなのでしょうか?とすれば、さほど深刻に受け止めなくてよいことなのでしょうか?
2.体調的に問題なさそうでも、常に溶連菌を疑って、迅速検査を受ける必要がありますか?
3.もし今後も迅速検査で陽性になれば、抗生剤を頻繁に1週間〜10日間も飲み続けなければならないことに抵抗があるのですが、迅速検査で陽性になる以上は、お薬を飲む必要がありますか?
4.一般的に、無症状で迅速検査で陽性を繰り返す患者で、扁桃腺が特にひどい扁桃炎や病巣となっていないケースでも、扁桃腺の摘出は必要でしょうか?
5.扁桃腺を摘出することで、もう溶連菌になる心配はなくなるのでしょうか?それで、腎炎やリウマチ熱の脅威から開放されるのかどうか、それが知りたいです。

以上です。宜しくお願いいたします。
回答:感染症内科 教授 宮下 和也
一般論として、A群溶連菌感染症は、何度も繰り返し罹ることがあり得る病気です。重要なことは、的確な診断と適切な治療を行うことです。記載された経過を見る限り、残念ながら、必ずしも適切な治療が行われているとは言えないようです。具体的には、
> バナン7日
> クラリシッド7日
> ファロム7日
> ワイドシリン7日
これは、いずれも、抗生剤の選択が必ずしも最善とは言えず、治療期間も不十分であった可能性が考えられます。ワイドシリン7日服用終了の翌日の細菌培養検査で陰性であったとのことですが、抗生剤とともに培養しても菌は生えませんので、再検する時期が早過ぎた可能性が考えられます。標準的な治療は、ペニシリン系抗生剤を10日間の服用です。不十分な治療では除菌しきれず、感染症を繰り返したり、合併症を引き起こす恐れがあります。

> こんなにも溶連菌を繰り返すという患者は珍しいのでしょうか?
珍しくはありません。小児では、A群溶連菌は、日常的に、高い頻度で感染します。特に、幼稚園・保育所・小学校などでは、流行も見られますし、無症候性保菌者も感染源となりますので、1年の間に何度も罹患することは、決して珍しいことではありません。が、上述の通り、治療が必ずしも最善ではなかった可能性も考えられ、そのため繰り返してしまったのかも知れません。

> 気付いていないだけで同じような子供はたくさんいるものなのでしょうか?
少なからずいるだろうと考えられます。しかし、問題は、症状が軽微なためにA群溶連菌感染症と診断されないまま不用意に抗生剤が短期間投与され、後から合併症が出で、ようやくそれと判明したという例も実際にある点です。

> とすれば、さほど深刻に受け止めなくてよいことなのでしょうか
深刻に思い悩まなくても良いと思いますが、適切な診断・治療は必要です。

> 体調的に問題なさそうでも、常に溶連菌を疑って、迅速検査を受ける必要がありますか?
常に、可能性を考えておくことは重要です。A群溶連菌感染症の場合、必ずしも典型的な症状が出るとは限りません。症状が軽微であっても、リウマチ熱や急性糸球体腎炎の原因になる場合もありますので。疑わしければ検査で確認するのが、正しい診療姿勢です。

> もし今後も迅速検査で陽性になれば、抗生剤を頻繁に1週間〜10日間も飲み続けなければならないことに抵抗があるのです。
症状が比較的軽くても、のどの痛み・発熱などの症状や、のどが赤く腫れているなどの所見があり、迅速検査で陽性であれば、ペニシリン系抗生剤を10日間の服用するが標準的な治療です。標準的な治療を行わなかった場合には、合併症のリスクが高くなると言えます。

> 一般的に、無症状で迅速検査で陽性を繰り返す患者では扁桃腺の摘出は必要でしょうか?
扁桃摘出は、現時点では行う必要はないと考えられます。が、ご質問の意味がよく分かりかねる点があります。無症状というのは、どういう意味でしょうか?

全く無症状なのに、受診するのですか?もしもそうであれば、無症候性保菌者であり、その場合には、通常は、抗生剤の投与もしませんし、もちろん扁桃摘出など必要ありません。ただし、リウマチ熱や急性糸球体腎炎の既往がある場合には、無症候性でも、見つかれば、積極的に抗生剤で治療します。病巣になっている場合には、扁桃摘出を考慮する必要があります。

それとも、苺舌・発疹・落屑などがないという意味でしょうか?もしもそうであれば、A群溶連菌感染症について誤解しています。苺舌・発疹・落屑などは、猩紅熱の症状であり、A群溶連菌の発赤毒素に対する体の反応に過ぎません。発赤毒素に対しては中和抗体が作られますので、同じ型の発赤毒素を持つA群溶連菌の再感染の場合には、苺舌・発疹・落屑などの症状は全く現れません。苺舌・発疹・落屑などの症状が現れるのは、あくまでも、発赤毒素に対する中和抗体を持たない場合、すなはち、初感染に限られるのです。

つまり、A群溶連菌感染症は、一般的には、鼻・咽頭・扁桃などの上気道、あるいは皮膚の急性炎症であり、苺舌・発疹・落屑などの症状が全く無いことも多く、見た目でだけでは、他のウイルスや細菌による炎症と簡単には区別はできないことが多いのです。

ですから、見た目だけでは普通の感冒と見分けが難しくても、迅速検査でA群溶連菌が陽性であれば、A群溶連菌感染症と診断し、ペニシリン系抗生剤を10日間の服用するが標準的な治療です。

しかし、そのような感染症を繰り返したからと言って、扁桃摘出まで考える必要はありません。

> 扁桃腺を摘出することで、もう溶連菌になる心配はなくなるのでしょうか?
扁桃摘出しても、A群溶連菌感染症に罹患することはあり得ますし、実際にそのような例は珍しくはありません。病巣になっている場合であれば扁桃摘出を考慮すべきでしょうが、そうでない場合には、無用な手術は避けるべきです。
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